みんなの地麦 北海道産小麦でつくったおいしいもの食べてみませんか?

2017年度の取り組み

北海道小麦の発信 ~2017年度調査を振り返って~

みんなの地麦推進協議会 会長 深江園子

2017年度を振り返り、まず一番に産地に大きな天災がなかったこと、そして生産者と関係者の方々のご努力によって今年の麦が小麦粉になり食品になって食卓を豊かにしてくれることに感謝の念を表します。

活動テーマ

当協議会にとって、北海道小麦の普及拡大やPR活動とは「畑から食卓まで」のつながりの発信に他なりません。
そこから導かれるテーマは「北海道産小麦関係者の情報交流、および小麦産地コミュニティの醸成、支援」です。
小麦産地コミュニティとは、地域産小麦や小麦産地を鍵に利害や目的を共にする地域内連携です。特に行政支援の手の届かない小さな小麦コミュニティへのいち早い関与には、当会独自の役割があると考えます。

活動内容

①主要産地の調査およびネットワーク醸成

当会が接点を持つ地域小麦コミュニティには、連携先であり協議会設立のきっかけとなった「北海道小麦の輪」は小麦の実需者(製パン、製菓、製麺、パン講師)が近郊農家にアプローチして生まれたコミュニティ。「北海道小麦キャンプ」は十勝小麦関係者を横断する、おそらく道内最大規模のコミュニティであり、オホーツク北見にも波及しています。オホーツク北見では小麦キャンプ初開催を機に地元農家と実需、その他関係者の交流が深まっています。特に地域産小麦粉がある地域では、産学工商連携など横のつながりを生かして地元産小麦製品の開発も実現しています。また上記コミュニティのメンバーを通じて美瑛、富良野、岩見沢、日高などの小麦関係者とも接点が生まれています。

②実需者向け情報提供

先に述べた北海道産小麦のコミュニティに向けた当会の情報価値は、「食べ比べワークショップ形式」の導入にあります。特定のメーカー製品のPRを目的にせず比較テストを行うことで、地元産の特性が浮き彫りになります。後日の個別ヒアリングでは、初めて体験した、地元の小麦を使うモチベーションを得たという声が目立ちました。
もう一点は道外(首都圏)への北海道産小麦の発信です。外から見る北海道産小麦の魅力は、雄大な小麦畑のイメージに代表される「豊かさ」です。そこで小麦キャンプを題材に、地域丸ごとが小麦でつながる様子を映像や農家の言葉で伝えるプレゼンを行いました。受講者からは「畑に行ってみたい」「小麦農家に初めて会った」「小麦の苗を初めて見た」といった声が多く寄せられ、「顔の見える小麦」「会いに行ける農家」の訴求が十分に価値となり、北海道産小麦のファンづくりに寄与することが明らかになりました。小麦キャンプの大都市圏プレゼンテーションは、今後も何らかの形でぜひ継続したいと考えます。また、ツーリズム事業などとのシナジーにも着目していきます。

③親子向け食育

重視すべき点として、教材としての小麦のポテンシャルの高さが挙げられます。北見で小麦と大麦がテーマの食育企画を実施した際、ゲストとして農家の協力を仰いだところ参加者から非常に好評でした。実は北見市では小麦をテーマにした食育はほとんど行われていなかったこともわかりました。地元学的な視点で独自性の高いプログラムを提供することができたのは、多くのプロセスを経て食卓に至るという小麦の特性に負うところであり、食の学びそのものを目的化する従来の発想とは一味違う活動となりました。

細い水脈にも可能性

一般に、食づくりの過程と食卓が隔絶した現状に対して安心安全へのニーズは根強く、これも含めた社会的課題を理解した食材、いわば倫理性のある(エシカル)食材の価値が理解されつつあります。その例として有機(オーガニック)食材は環境持続性と安心安全、双方の価値にまたがっています。またベジタリアン等の食習慣や各種疾患の食餌法では、誰もが共に食を楽しめる障壁のない(ユニバーサル)食材が求められています。2020年東京オリンピックを追い風に3つのキーワード(エシカル、オーガニック、ユニバーサル)への注目度が増す中、こうした新たなニーズに応える麦類とその加工品についても高付加価値の観点で情報収集を行い、実需者ネットワークや生活者への情報や実売機会の提供を目指します。
生活者が安心安全、すなわち良質で素性の明らかな食を求めるほど国産小麦は注目され、主力である北海道小麦の需要は高まります。一方で国産小麦の生産状況はほぼ横ばいで、増産を目指す様々な取り組みが行われています。生活者にその努力を伝えることに加え、生産と実需がともに貴重な一俵の小麦の価値を高める試みについても、きめ細かく見守っていきたいと考えます。